2010年代のイタリア ユーロ危機と反EU

イタリアの政治

半大統領制

 イタリアは、半大統領制の国会である。半大統領制とは、国家元首である大統領と行政を司る首相が分かれている国である。半大統領制は、大統領と首相の力関係で2つに分かれる。大統領の権限が強いフランス型と首相の権限が強いドイツ型である。それはサミットなどの国際会議でよくわかる。サミットでは、フランスでは大統領が参加するが、ドイツが首相が参加する。

 イタリアでは、首相のほうが権限が強い。イタリアの大統領は、国家元首としての権限はあるものの、実際の政治は議会が選出した首相が行っている。

3つの政党

 イタリアは、日本と同じ議院内閣制をとっている。議会は主に3つのグループに分かれている。民主党を中心として中道左派グループ。フォルツァイタリアを中心とした中道右派グループ。そして、五つの星運動である。

2010年代のイタリアの首相

ころころ変わる首相

 イタリアの首相は、日本に引けを取らないほど首相がよく変わる。「おはよう、今日の総理は誰?」とのジョークがあるほどである。ちなみに、この記事を作成中にも首相が代わっていた。21年2月にスーパーマリオことマリオドラギ首相が誕生した。

ドラギ首相

 ドラギ首相は、かつて世界銀行やゴールドマンサックスで働いていた金融界に精通した人物です。11年には、ユーロの中央銀行である欧州中央銀行総裁を務め、ユーロ危機を乗り越えた。そこからスーパーマリオの愛称で呼ばれるようになった。

 21年1月、コロナ対策で民主党が連立を離脱。コンテ首相は退陣。ドラギ政権が成立した。

コンテ首相(五つの星運動)

 18年3月の総選挙で五つの星運動が大勝。議席数で第2位の地位を占めた。右派政党で同じ反EUの同盟と連立内閣を結成し、コンテ政権を樹立した。

 しかし、両党の政策はあまりにも違うため、19年8月に連立が解消された。コンテ首相は、同じ左派の民主党と連立政権を樹立した。

 政策面では、緊縮財政には反対。ベーシックインカム制度を導入。緊縮財政を求めるEUと対立姿勢を示した。外交面では、移民や難民規制を強化した。中国の一帯一路政策に参加。他のEU諸国やアメリカから批判を浴びた。

 五つの星運動とは、09年に結成された新興政党である。政党を立ち上げたのは、イタリアの人気コメディアンである。日本でいえば、俳優山本太郎が立ち上げたれいわ新選組のような政党である。18年の総選挙で、民主党を中心とした中道左派連合を抜いて第二党に躍進した。政党単独では第一党となった。

レンツィ首相(中道左派政権)

 イタリアは五つの星運動が登場する前は、共産党の流れをくむ中道左派政権とキリスト教民主同盟の流れをくむ中道右派連合の2つの派閥に分かれていた。日本でいえば、中道左派は立憲民主党、中道右派は自由民主党が当たる。

 10年代初頭、ベルルスコーニ首相の中道右派政権がスキャンダルでイタリア政界は混乱していた。

 13年の総選挙では、中道左派連合が単独過半数を獲得した。一方で、反EUを掲げる五つの星運動が躍進した。二大政党制が崩壊し、中道右派、中道左派、五つの星運動の三大勢力の時代を迎えた。

 五つの星運動が政権をとれないように憲法改正をしようとしたが失敗。18年の総選挙では、大敗。五つの星運動の単独過半数は阻止したもの、第三党に陥落。中道右派の同盟と五つの星運動の反EU連立内閣が成立した。

ベルルスコーニ首相(中道右派政権)

 ベルルスコーニ首相は、92年の政界大再編時に登場した政治家で中道右派のトップである。しかし、ギリシャ通貨危機から始まった財政危機に加え、本人のスキャンダル等で12年に退陣。

 13年の総選挙では中道左派に大敗し、政権を引き渡した。

2010年代のイタリア

反EUと移民

 現在のイタリアの政策の論点は、EUか反EUかである。EU支持派は、主に富裕層であり、反EUは主に中間層や貧困層である。では、なぜ中間層は反EUに動いたのであろうか。

 その理由の一つは、移民の問題である。00年以降、EUは東欧諸国に拡大した。これにより、東欧の出稼ぎ労働者が拡大した。これによって低所得者層の仕事を奪っていった。しかし、この影響を受けたのドイツなどの景気の良い国である。イタリアなどの景気の悪化のしている国は次の理由のほうが大きい。

景気対策への制限

 通常、景気対策としては3つある。減税、公共事業と金融緩和である。02年に通貨統合が行われた。これにより、イタリアは金融緩和を自由に行えなくなった。さらに、EUは財政赤字に上限が設定されている。イタリアの財政赤字は、すでに上限に達している。そのため、景気が悪くても、増税や緊縮財政をとらざるを得ない状況であった。

 民主党ら中道左派連合はこれを忠実に守ろうとした。一方で、五つの星運動は、これを破って財政出動して景気を良くしようとした。この政策によって、五つの星運動は、13年と18年の選挙で躍進した。

PIGs

 09年、ギリシャ財政の粉飾決算発覚をきっかけにギリシャ通貨危機が勃発した。リーマンショックの影響で、欧州の金融機関は。リスク資産を売ってユーロ加盟国の国債を購入していた。その中で人気があったのは財政赤字が多い高金利の国債であった。その国は、(P)ポルトガル、(I)イタリア。(G)ギリシャと(s)スペインである。これら四か国の頭文字をとってPIGsとよばれた。

 その中でも、影響が大きいのがイタリアである。この危機は現在でも懸念されている。金融界で最も懸念されているのが中国初が不況であるが、その次に懸念されているのがイタリアの財政破綻をきっかけとする金融危機である。

3つの小国

バチカン市国

 最後にコラム的に、別の内容をやっていきます。イタリア国内には2つの独立国があります。バチカン市国とサンマリノ共和国です。

 バチカン市国は、ローマ市内にある独立国である。ローマ=カトリックの総本山でサン=ピエトロ教会がある。

 かつてはイタリア中部一帯を統治していた。しかし、19世紀半ば、イタリア王国に併合。20世紀半ばに、現在の教皇庁が復活。現在に至る。

 国際連合にはオブザーバーとして参加。世界最小の国家である。面積は東京ディズニーシーくらいである。人口は800人くらいである。

サンマリノ共和国

 サンマリノ共和国は、イタリア中東部にある国である。世界で五番目に小さい国で面積は十和田湖と同じくらいである。人口は3万人強である。

 4世紀、隠れキリスト教徒がローマ帝国の迫害を逃れるために共同体を作ったのが始まりである。17世紀、中部イタリアを支配していたローマ教皇が独立を承認。イタリア王国もこれを追認し、現在に至る。

 サンマリノは、現在も中世の街並みが残っている。また、山頂から望むアドリア海は絶景である。なお、イタリアでではないので消費税がかかりません。

モナコ公国

 モナコは、フランス国内にある地中海に面した独立国である。面積は、東京ディズニーリゾート全体とほぼ同じ面積である。人口は4万人弱である。

 F-1やカジノで有名で、高級リゾート地としても知られている。