1760年代のアメリカ なぜ、アメリカは独立戦争に向かったのか?

1750年代、イギリスは七年戦争に勝利した。イギリス政府は、七年戦争の戦費回収のために植民地に重税をかけた。このことにより70年代のアメリカ独立戦争につながる。

なぜ、アメリカ独立戦争が起きたのか?

イギリスの戦費調達システム

 なぜ、アメリカ13植民地は、イギリス本国から独立しようとしたのだろうか。その理由は、イギリス本国が13植民地に重税を課したからである。

 では、イギリスは13植民地に重税を課したのだろうか。それはイギリスの戦費調達方法にある。

 従来の戦費調達は、国民や貴族に増税を行い、それによって得た資金で戦争へ向った。しかし、18世紀後半のイギリスは違った。イギリスは国債発行を行って戦争を行う。戦争に勝利すると敗戦国に植民地を要求。植民地での利益によって国債を返済(償還)した。

 当時の投資家もその仕組みをよく理解しており、イギリス国債は簡単に販売することができた。

 フレンチ=インディアン戦争も同じで、フレンチ=インディアン戦争のために発行した国債を償還するため、13植民地からの利益は当然必要であった。

砂糖法

 中米、西インド産の砂糖へには関税がかかっていた。64年、その課税を半額にする代わりに密輸入の取り締まりを強化した。

 当時の砂糖はラム酒製造に使われていた。産業革命前でまだ綿花の需要が高くない時代、ラム酒製造は重要な産業であった。そのため、砂糖への課税強化はアメリカ植民地の人々の反発を強めた。

印紙法

 65年、イギリス本国議会は印紙法を決議した。これはすべての書類に印紙を貼ることを義務づけた。印紙税は現在の日本でも存在し、高額な金額の領収書や重要な契約書には印紙が貼られる。これらの印紙は、印紙の販売代金は、国庫に納めれれ国家税収の一部を担っている。

 ただ、アメリカ植民地に課せられた印紙税はほとんどの書類に課せたれた。卒業証書や新聞・広告も対象となった。トランプも印紙税の対象となっている。スペードのエースにたまに会社の後ロゴが入っているがそれはスベードのエースに印紙を貼っていた名残である。

代表なくして課税なし

 印紙税は、65年4月に本国議会を通過。10月施行となった。本国で印紙税が成立した翌5月、ヴァージニア州議会で印紙税反対決議が行われた。当時の州議会は田舎の市町村議会のようなもので国会が決めた税金に効果はない。ただの決意表明に過ぎない。その議会の演説で出てきたのが「代表なくして課税なし」という表現である。

 ヴァージニア州は、アメリカ最古の植民地で、17世紀初頭のエリザベス女王の時代に成立した。州の名前はエリザベス女王の別称ヴァージンクィーンからとられている。

 初代大統領ワシントン、第3代大統領ジェファソンなど建国当初はヴァージニア州出身の大統領が続いた。南部の温暖気候が幸いし奴隷を使った大規模農場経営者が多く、アメリカ産業革命前の富裕層であった。

フレンチ=インディアン戦争に勝利

フレンチ=インディアン戦争とは

 フレンチ=インディアン戦争とは、イギリス・イギリス植民地連合軍が、フランス・ネイティブアメリカン(インディアン)連合軍に勝利した戦争である。当時、ヨーロッパでは七年戦争が行われていて同時並行で行われていた。

パリ条約

 パリ条約前の新大陸北部の様子はどのようになっていたのだろうか。

イギリスアメリカ東海岸(アパラチア山脈以東、フロリダ除く)
フランスケベック(カナダ)
東西ルイジアナ(ロッキー山脈とアパラチア山脈の間)
スペインアメリカ西海岸(ロッキー山脈以西)
メキシコ、フロリダ半島、キューバ

パリ条約では次のように講和した。

  • フランスは以下の地域をイギリスに割譲
    • ケベック(カナダ)
    • ルイジアナ東部(ミシシッピ川以東)
    • 西インド諸島のグレナダ
  • フランスは以下の地域をスペインに割譲
    • ルイジアナ西部(ミシシッピ川以西)
  • スペインは以下の地域をイギリスに割譲
    • フロリダ半島
      (キューバ返還の見返りとして)

この結果、アメリカの状況はこのように変わった。

イギリスカナダ
アメリカ東部(ミシシッピ川以東、フロリダ含む)
フランスほぼ、撤退
スペインアメリカ西部(ミシシッピ川以西)
メキシコ、キューバ