概要
中世ヨーロッパ編、最後はこの時代の文化をみていきます。
宗教色の強い文化
中世ヨーロッパ文化の最大の特徴は、宗教色が強いことである。ローマ=カトリックは当時絶大な権力を持っていた。
世俗社会から離れた修業の場として、修道院といつ施設がある。その始まりは、6世紀のイタリアのベネディクトゥス修道院である。当時のイタリアは、戦乱の真っただ中であった。
12世紀から13世紀の十字軍の時代、修道院は森林を切り開いて耕地を増やした。これを大開墾時代という。これにより農業生産量は増大した。さらに森林の減少で交通や商業が発展した。一方で、交通の発展により14世紀にペストの流行が起こる。
12世紀には、ヨーロッパ各地に大学が成立した。これは、イスラム教の学院の影響を受けて作られた。当時の中心学問は神学、すなわち聖書の研究であった。14世紀後半、オックスフォード大学の神学者ウィクリフが登場。16世紀の宗教改革につながる。また、ラテン語の研究が進んだ。
大学
9世紀、フランク皇帝のカール大帝は、学者を集め聖書の勉強をした。これが、カロリング=ルネサンスである。アルファベットの小文字が作られたのもこの時代である。この時期の中心的な学者は、アルクインである。
スコラ学の研究もこの時期に行われた。スコラ学は、信仰を論理的に体系化しようとする学問である。
- アンセルムス…実在論
- アベラール……唯名論
- トマス=アクィナス…「神学大全」
- ウィリアム=オブ=オッカム…唯名論(近代合理思想の基礎)
- ロジャー=ベーコン…自然科学者
12世紀に入ると、十字軍の影響でイスラム文化が流入した。この時代を12世紀ルネサンスという。このころ、スコラ学に古代ギリシャの哲学の影響を受けるようになる。トマス=アクィナスは、『神学大全』をまとめた。彼の理論は、教皇権の李トン的支柱となった。イスラム文化の研究で、自然科学の研究も飛躍的に伸びた。その中心人物は、ロジャー=ベーコンである。ベーコン氏は、実験や観察を重視した。
12世紀、イスラム圏の学院の影響をうけて、大学が建設された。最初、大学は修道院に作られたが、のちに都市にも作られるようになった。大学は教皇や皇帝の特許状によって自治権を持つようになった。当時の大学は、神学のほかに法学や医学の研究が行われた。
- サレルノ大学…11世紀に成立したが、大学になったのは13世紀に入ってから。南イタリアに建設。イスラム圏で発展した医学を中心に研究。
- ボローニャ大学…ヨーロッパ最古の大学。12世紀に成立。北イタリアにあり、法学を中心に研究された。
- パリ大学…12世紀末にフランスに成立した神学の大学。現在は学生寮のあったソルボンヌが代名詞になっている。
- オックスフォード大学…12世紀のアンジュー帝国(プランタジネット朝)期のイングランドで成立。パリ大学を模範とした。自然科学の分野で大きな成果を上げる。
- ケンブリッジ大学…12世紀にオックスフォード大学が分裂して成立。
教会建築(美術)
ビザンツ様式
中世初期は、ビザンツ帝国の影響を受けたビザンツ様式の教会が建てられた。8世紀の偶像崇拝論争でビザンツとの仲が悪くなったとしても、ビザンツ様式の教会が建てられた。ハギア=ソフィア聖堂やサン=ヴィターレ聖堂がその例である。
ロマネスク様式
11世紀になると、ローマ教会独自の教会建築が成立した。これがロマネスク様式である。ビザンツ教会に対抗してローマ教会形式のという意味である。
厚い石壁と小さい窓が特徴である。これは、建築技術が未熟で薄い壁や大きな窓を作る技術が当時なかった。
代表例は、ピサ大聖堂である。
ゴシック様式
12世紀に入り、イスラムの影響を受けるようになるとゴシック様式が登場した。ゴシックとは、イタリアでゲルマン民族を意味するゴード人のゴード風からきている。
建築技術の進展により、とんがった屋根が特徴である。また、広い窓にはステンドグラスの宗教画が絵が描かれた。
フランスでは、ノートルダム大聖堂やシャルトル大聖堂が、神聖ローマ帝国(ドイツ)では、ケルン大聖堂がその一例である。
騎士道物語(文学)
この時代の文学の代表は、騎士道物語である。ラテン語ではなく、口語で書かれた。騎士の道徳観が描かれているが、女性の保護の観点から恋愛的要素も含まれている。
このほかには、『ローランの歌』、『ニーベルンゲンの歌』、『アーサー王物語』がある。
まだ神が普及する前の時代。これらの文学は、吟遊詩人が宮廷で歌った。その最盛期は12世紀である。